「公務員辞めるなんてもったいない」
その一言で、何度、自分の気持ちにフタをしてきただろう。
この言葉、何回言われたか分かりません。親、親戚、同期、上司、地元の友達。会うたびに言われ続けました。
こんにちは、元公務員のありーどです。17年勤めた職場を辞めて、民間に転職しました。年収は下がりました。それでも後悔はしていません。
でも、辞めると決めるまでの数年間、ずっと「もったいない」という言葉に縛られていたのも事実です。あの言葉、本当に厄介で、自分の気持ちにフタをしてくる呪いみたいな効果があるんですよね。
今日は、当時の自分に向けて書きます。同じように「もったいない」と言われて立ち止まっている人にも、たぶん刺さると思います。
「公務員辞めるのもったいない」の正体は何なのか
結論から書きます。「もったいない」と言ってくる人の多くは、公務員という仕事の中身を見ていません。見ているのは、肩書きと安定と世間体です。
これは悪口ではなくて、ただの構造の話です。中で働いている本人にしか、本当の疲労や違和感は分かりません。外から見える公務員は、給料が安定していて、ボーナスが出て、定年まで勤め上げれば退職金がそこそこ出る。それは本当のことです。
だから外野から見れば「辞めるなんて意味が分からない」になる。これは、ある意味では正しい感想なんです。
でも、本人が向き合っているのは、毎週日曜の夜に襲ってくる重たさだったり、誰のためにやっているのか分からない仕事だったり、評価されない頑張りだったりします。外から見える「もったいない」と、中で感じている「もたない」は、別の話なんですよね。
17年いた人間として正直に書くと、公務員という仕事が「もったいない」だけの存在ではないのは間違いありません。守られている部分はたくさんあります。だからこそ、辞めるかどうかは自分の人生で決めるしかない。他人の「もったいない」では決められない問題なんです。
「もったいない」と言ってくる人の3パターン
言ってくる人を整理してみると、だいたい3つのパターンに分けられます。それぞれ、向き合い方が違います。
① 親世代(昭和の安定信仰タイプ)
これは一番しんどいパターンです。親が公務員を勧めてきた家庭だと、辞めることが「親への裏切り」みたいな構造になりがちです。
でも、よく考えてください。親世代が信じてきた「終身雇用+年功序列+退職金で老後安泰」のモデルは、もう令和には通用しません。親が良かれと思って勧めてくれた道と、今の自分にとっての正解は、違っていて当たり前なんです。
親には親の時代の正解があります。それを否定する必要はありません。ただ、自分の人生は自分の時代で生きるしかない。それだけの話です。
② 同僚・先輩(残る側の自己肯定タイプ)
これは無自覚なパターンが多いです。「もったいないよ」と言いながら、実は自分が残ることを正当化したいだけ、というケース。
同僚が辞めると、残る側はちょっと揺らぎます。「自分もこのままでいいのかな」と一瞬思ってしまう。その揺らぎを打ち消すために、辞める側に「もったいない」を投げてくる構造です。
ここで真に受けて立ち止まると、相手の心は軽くなりますが、自分の人生は何も変わりません。同僚の安心のために、自分の決断を曲げる必要はないです。
③ 過去の自分(一番手強い相手)
意外と一番強敵なのが、過去の自分です。
公務員試験に受かるために勉強した時間。配属されてから覚えた仕事。築いてきた人間関係。それを全部捨てるのか、と過去の自分が引き止めてくるんです。
でも、ここで気付いてほしいことがあります。過去にかけたコストは、辞めなくても戻ってきません。これは「サンクコスト」の話です。「ここまでやったから」を理由に決断を保留すると、過去のために未来を犠牲にすることになります。
「もったいない」をどう乗り越えたか(私の場合)
正直に書くと、私は綺麗に乗り越えたわけではありません。「もったいない」と言われるたびに、その日は決断が鈍りました。家に帰って「やっぱり今のままでいいのかな」と何度も思いました。
でも、ある時点で考え方を変えました。「もったいない」を、相手の言葉ではなく、自分への質問に変換することにしたんです。
具体的にはこの3つの問いに置き換えました。
- このまま定年まで勤めた自分を、今の自分は誇れるか?
- 10年後の自分から見て、今の決断はどう映るか?
- 辞めずに残ることで、自分は何を失っているのか?
この3つを紙に書いて、自分なりに答えていったとき、答えはほぼ出ていました。
「もったいない」は、外から見たら正しいかもしれません。でも、自分の人生で何を「もったいない」と感じるかは、自分にしか決められない。給料を捨てるのがもったいないのか、自分の時間を捨てるのがもったいないのか、ここの優先順位は人によって違います。
私の場合は、後者の方が大きかった。だから辞めました。それだけの話です。
辞めて分かった「もったいなかったもの/もったいなくなかったもの」
転職した今、振り返って正直なところを書きます。
もったいなかったもの(=失って分かった価値)
- 毎月決まった日に振り込まれる安心感:これは正直、辞めて初めて重みが分かりました。
- 住宅ローンや賃貸契約の通りやすさ:公務員という肩書きは、思っていた以上に金融機関に強かったです。
- 同期というセーフティネット:愚痴を言い合える同期の存在は、思った以上に支えでした。
もったいなくなかったもの(=失っても困らなかった価値)
- 世間体としての「公務員」という肩書き:辞めて1年経つと、誰も気にしていないことに気付きました。
- 定年まで勤めれば出る退職金:金額は大きいですが、その対価として差し出している時間の方が、自分には重かったです。
- 年功序列で上がる給料:給料は下がりましたが、その代わりに使える時間と心の余白が増えました。
「もったいない」は、辞める前と辞めた後で意味が反転するんですよね。外野が口を揃えて言う対象(肩書き・退職金・年収)は、辞めてみると意外と「もったいなくなかった」側に入る。逆に、当たり前すぎて気付かなかったもの(同期・安心感・社会的信用)の方が、後から重みに気付く。
同じ言葉に悩んでいる人へ
「公務員辞めるなんてもったいない」と言われて、立ち止まっている人へ。
その言葉に従う必要はありません。でも、無視する必要もありません。「自分にとって本当にもったいないのは何か」を、紙に書き出して自分の言葉で答えてみてください。それだけで、決断はかなり前に進みます。
辞めるにしても辞めないにしても、まず「自分が民間でどう評価されるか」を知っておくことをおすすめします。選択肢を持っている状態と持っていない状態では、心の余裕が全く違います。「いつでも辞められる」と思えるだけで、目の前の仕事に対する重さが変わるんです。
辞める・辞めないを決める前に、自分の市場価値を一度知っておくこと。これが「もったいない」という言葉に振り回されないための、一番の対策だと私は思っています。
まとめ:「もったいない」は他人が決めることじゃない
- 「公務員辞めるなんてもったいない」は、外から見た景色の話
- 言ってくる相手は3パターン(親世代/同僚/過去の自分)あり、向き合い方が違う
- サンクコストに引きずられず、未来側で判断する
- 「もったいない」は辞める前と辞めた後で意味が反転する
- 決断する前に、自分の市場価値を知ることから始める
17年勤めて辞めた身として正直に言います。年収は下がりましたが、後悔はしていません。失ったものもあるし、取り戻したものもある。それを全部含めて、自分で決めた選択だから、納得できているんだと思います。
あなたの「もったいない」は、あなたが決めていい。それだけは、伝えておきたかった話です。
誰かに寄り添えることができたら嬉しいです。
今日も読んでくれてありがとうございました。

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